これは私の感想です。

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『サマーゴースト』線香花火が映し出す、40分のひと夏。クソデカ感情爆発映画【あらすじ感想若干ネタバレ】

きゃんどぅです。

今回は、今話題になっているアニメーション映画、『サマーゴースト』の感想を書いていきます!

 

作品情報

題名:『サマーゴースト(Summer Ghost)』

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この絵にビビッときたら観ろ

 

原案:loundraw

監督:loundraw

脚本:安達寛高(乙一)

制作:FLAT STUDIO

配給:エイベックス・ピクチャーズ

 

公開:2021年11月12日

 

上映時間:40分

 

あらすじ

「サマーゴーストって知ってる?」

ネットを通じて知り合った高校生、友也・あおい・涼。
都市伝説として囁かれる“通称:サマーゴースト”は若い女性の幽霊で、花火をすると姿を現すという。

自身が望む人生へ踏み出せない"友也"
居場所を見つけられない"あおい"
輝く未来が突然閉ざされた"涼"

 

彼等にはそれぞれ、サマーゴースト似合わなくてはならない理由があった。

生と死が交錯する夏の夜、各々の思いが向かう先は――

『サマーゴースト』公式サイトより引用

 

 

 

 

ネタバレ無し/未見向け感想

観る前の僕「まあ時間余ってるし40分でサクッと観てみるか」

観た後の僕「

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40分という短い尺の中で、よくもまあここまで沁みるものを作ってくれたもんだと思いました。

 

要所要所で胸を打ってくるBGM、無駄のないキャラクター描写、そして情緒あふれる美しい映像。

短い尺なのに、これ以上ない満足感を得させてくれます。

 

加えて、脚本である乙一こと安達寛高ストーリーテリングも、ただ爽やかなだけではなく少し湿り気を残す具合があり非常に良かった。

ネット→リアルで出会った3人の高校生が、線香花火が燃えている間現れる幽霊、通称サマーゴーストと過ごしたひと夏を描いている今作ですが、これだけ聞くと新海誠的アトモスフィアを感じることでしょう。

しかしそんな中にも乙一らしさが滲み出ており、おそらくあと1時間長かったらそれはもうジットリとした要素が存分に出ていたことかと思います。この程度で済んでいてよかった。

 

また、線香花火が燃える間だけ死者と会えるという設定は、ただ単に設定としてあるだけではなく、物語に奥行きを持たせる描写であるとともに、「いのち」をテーマとしたこの映画においては非常に示唆に富んでいました。

それに、この線香花火は一番最初のカットから描かれているんですけど、そこだけで「あ、この映画はいいぞ。」と思えるくらい美しい作画で、いかに光を大事にしているかがなんとなくわかるものでした。

 

個人的に一番刺さったのはキャラデザで、前に予告編を見たときからめちゃくちゃ良いな~~と思っていたんですが、実際に本編を観たらぶち刺さりましたね。柔らかくもシャープなタッチで、整った顔立ちしか出てこないもんだから好きになっちゃいます。これでマンガ読みたい。

 

そんな今作の原案・監督であるloundraw氏は、これが初監督作品となる。2021年11月現在で26歳の、新進気鋭のクリエイターです。有名どころでいうと、『君の膵臓をたべたい』の挿絵などに起用されており、光あふれる美しさが特徴的なイラストレータ兼作家という、才能が止まらない期待の星です。

正直言って、初監督作品からこんなにクオリティの高いものを見せられると、どうしたってこれからの活躍に期待したくなります。次は40分と言わず、90分の長編アニメーションや連作のシリーズものを制作してほしい。絶対観るし、もっともっとのびのび創作を続けてもらいたいです。

 

総じて、このサマーゴーストは魅力的なキャラデザ、美しい映像表現と胸を打つBGMに加え、夏の爽やかさや湿り気を孕んだまとまりのいい脚本を期待の若手クリエイターがうまく料理して仕上げた、良質な作品でした。

 

公開が始まってまだ間もないため、観に行ける環境にある人で少しでも興味があれば、強く鑑賞をオススメします。短編ということでかはわかりませんが、1300円で鑑賞できます。

 

40分の”夏”を、ぜひスクリーンで味わってください。

 

以下、ここすきシーン列挙。

・線香花火のパチパチ

・みんなのお顔良すぎ

・成績が良くていいねぇ…

・ふわっと空に飛びあがり、アスノヨゾラ哨戒班

 

ネタバレ含む/鑑賞者向け感想

エンドロール後の余韻がとんでもなかった。久しぶりに感情のたまり場が嘆息に出ました。

 

何から書けばいいのか、何を書けばいいのかが正直分からなくなってます。まだ1回しか観ていないというのもあるし、基本的に良い部分は上で書いてしまった気がする。

 

とりあえず書きなぐってみる。

 

まず、やはり最初の線香花火の瞬きのカットが非常に印象的でした。線香花火の火って、不思議な瞬き方をしますよね。火の発生源がつながっていないというか、火が瞬間的に現れては消えるあの感じ。

あの具合がリアルに、だけどアニメだってわかる程度の描かれ方をして、一瞬で作品の世界に引き込まれてしまいました。この線香花火が冒頭に映されることによって、作品についてのストーリーについて全く知らない観客にも、今作のテーマや大まかな流れを伝えることができていると思います。

 

夏、儚さ、いのち、切ない。そういった要素があるということのザックリな理解が自然に入ってくる。この「説明しない説明」によって、個人的には来たる感動への心構えができたため、涙腺ヨワヨワボーイにとってはありがたいところだった。まあ結局泣いたんですけどね。

 

そんで、飛行場で幽霊を呼び出すという設定も、空を飛ぶことへの前準備としてはかなり丁寧でした。

特に絢音さんが初めて三人の前に現れるときに、完全に飛行機の着陸の動きになっているのが印象的でした。自由に飛べるんだけど、ある程度の制約があるのかな?と推察できるところですね。穿った見方しすぎか。

 

一つ一つポイントを挙げているとまとまりが悪くなるので、ここからは少し気になった部分を。

 

尺が短くて仕方ないとは思うんですけど、やっぱりもう少し三人の人となりの掘り下げをしてほしかったかなと感じました。もちろんある程度の把握は容易にできるんだけど、全編を通して愛着が湧くことがありませんでした。

 

正直、友也は環境と才能に恵まれているのに贅沢な悩みだな~と思ってしまいました。まあ、恵まれているからこその空虚であったり、教育ママからの矯正があっての才能かもしれないので、悩むのも仕方ないかもしれませんが。

 

また、あおいちゃんはあの容姿でスクールカースト下位になることがあるのか?と思ってしまいました。容姿が良くて妬まれているという可能性もありますけど、絢音さんに「幽霊の世界にもスクールカーストってあるんですか?」って聞いてたので、普通に校内で孤立しているのかなと推測しました。

普通にアニメ作品だからある程度見栄えするようなキャラデザってことで仕方ないんですけど、なんとなく実際にいじめを受けて悩んでいる人にとっては感情移入したくても私よりマシじゃん…って思っちゃうんじゃなかろうかと考えてしまいました。

 

涼くんについては、今までできていたバスケが病気によりできなくなり、余命も短いという絶望があるのが二人に比べて説得力があるのでなんとも言えません。

 

そんなの、アニメ作品だから暗くする必要ないじゃんって言われてしまうかもしれませんが、この作品に関しては『生きる理由』を生むのがゴールの一つにあるため、登場人物たちがある程度生きるのに恵まれたものを持っていると、そこのテーマに関して少し強度が落ちるのかなと思いました。

ここの評価は観る側がこの作品の何に重きを置くかで大きく変わるので、自分はこう感じたというだけの話として受け取ってください。

 

 

もう一つ、絢音さんの死体問題。

友也、お前スーツケース見つけたのはいいけど、その死体どう処理したの…?って考えてしまった。絶対考えたら負けなんだけど、警察に通報しても怪しまれるだろうし、放置するのも絢音さんを大事にしてないし…。

 

母親にペンダントを返してあげるのはいいけど、それはそれで苦しめることにならないか?生きているって希望をもたせるほうが残酷なのでは?という余計な考えも出てきちゃって、小説版に書いてあるならぜひ読んですっきりしたいな、と思いました。迷惑な観客ですわね。

 

 

なんだかんだ言いましたが、僕はこの作品が大好きです。エモいという一言で片付けるのは簡単なので使いたくありませんが、観ている間いろいろな感情が入り交ざって、心の中がとんでもないことになっていました。

最後に絢音さんを描いた絵が映されたときには、得も言われぬ心情になりスッと涙が流れ、入場時にもらったパンフレットを大切にしようと思いましたね。

 

あと、脚本の安達寛高こと乙一氏ですが、この内容を氏がやっているというのをあとに知ったときは、彼のデビュー作である『夏と花火と私の死体』を思い出しました。

内容はまっっっっったく違いますが、タイトルをこれにしても全く違和感なく出せるよな…と思ってしまいました。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。観てからすぐに勢いで書いてしまった駄文のため、まだまだ書き足りないことがあるんですけど、また二回目を観てからとかそういうときに書き足していこうと思います。

 

最後に言わせて。うらめしや~